第2・3回は、ウイルス, 原核生物, 菌類について解説しました。
ウイルスの種類は多いのですが、緊急性を要する病原性のものなどが主として調べられているだけです。ウイルスは膜系の細胞構造物を持たず、自己増殖できないなどの点で原核生物とは異なります。ウイルスと原核生物の違いをきちんと理解しておいてください。
原核生物はバクテリア(細菌)とアーキア(古細菌)に分けられます。バクテリアは非常に身近な存在ですが、アーキアは極限環境下で生息しています。分子生物学的手法により調べた結果、アーキアは真核生物と同じ枝から出ていることわかりました。また、近年はさらに細かく分類されています。
菌類についてはまずその定義をお話しした後、特に代表的かつ身近にある子嚢菌門と担子菌門について解説した後、藻類やシアノバクテリアとの共生体である地衣類について解説しました。
第4・5回は、細胞内共生と藻類について解説しました。
まず細胞内共生について解説しました。ミトコンドリアや葉緑体は独自のDNAのを持つなどバクテリアと同様の特徴を持ちます。これらのDNAを解析すると好気性のバクテリアとシアノバクテリアが細胞内で共生し、それぞれミトコンドリアや葉緑体にオルガネラ化したと考えられています。
次に藻類の定義や水平分布、垂直分布などの解説をしました。藻類は水中で生育するために光合成に使う光は光強度と光質の両方を考慮しないといけないのが高等植物と大きく異なる点です。また、生育場所の光環境にあわせてクロロフィルなどの色素組成を変えて、最も効率良く光合成ができるようにしています。
シアノバクテリアについて解説しました。シアノバクテリアは分類上は原核生物ですが、酸素発生型光合成を行うので藻類として扱われることが多いです。その他の特徴としては、クロロフィルaとフィコビリン系色素を持つ点、細胞壁が細菌と同じペプチドグリカンを成分としている点などです。また、シアノバクテリアの中にはクロロフィルdをもっていたり、ジビニルクロロフィルをもっているものもいます。
紅色植物門はクロロフィルaのみをもち、光を集める部分にフィコビリン色素をもっている点でシアノバクテリアと共通ですが、こちらは真核生物です。ここでは、シゾン(Cyanidioschyzon merolae)について解説しました。
灰色植物門ではシアネルについて説明しました。
第6・7回は、藻類のつづきとコケ植物, シダ植物について解説しました。
オクロ植物はストラメノパイルという大きなグループの中にまとめられ、これには褐藻(ワカメやコンブなど)や珪藻などが含まれ、クロロフィルaとcをもちます。さらに葉緑体が4重膜で囲まれていて、このうち2枚は葉緑体膜、残り2枚は葉緑体ERといって小胞体によって囲まれています。その他、アイスアルジーについても簡単に触れました。
緑藻のうち、水中に残ったグループと陸上植物のもとと考えられるグループについて説明しました。藻類には一次共生の他、二次あるいは三次細胞内共生をおこしたものもいます。
コケ植物やシダ植物は地味な印象ですが、コケ植物は水中生活の藻類から維管束を持つシダ植物への橋渡しとして進化的に重要な位置にあります。シダ植物も一次維管束をもつ草本と二次維管束をもつ木本との橋渡しをする位置にあり、進化的に非常に重要です。
近年、遺伝子による系統分類が行われていますが、形態観察と遺伝子の両方を使って、より正確度の高い分類が行われると考えられます。
第8・9回は、種子植物について解説しました。
まず裸子植物について解説し、次に被子植物について重複受精という仕組みがあることとその意義について解説しました。
被子植物では、APG分類体系が採用されているので、図鑑等も現在それに対応しています。ただ卒論などで専門的な記述が必要な場合や研究者を目指す人以外は、和名はよほどのことがない限り変わらないので、こちらを覚えておけば十分自然観察で使えます。
第10・11回目は、種子植物のつづきと、植物と水について解説しました。
花は生殖器官であり、花式図や花の特徴、花を形作る遺伝子のモデル(ABCモデル)について解説しました。
その後、通導組織である道管や篩管について解説し、特に道管の太さと植物の分布について論文を紹介しました。