化学前学期の講義概要

第2回 物質の分類, 測定の体系

 第2回は、物質の分類と測定の体系について解説しました。
 まず、物資とはどのように分類されるのかについて解説しました。混合物について、種々の成分の懸濁液である血液で説明しました。
 次に単位について解説しました。化学に限らず、ものの長さや重さなどを示すために単位を使用するとわかりやすくなります。単位は国ごとに異なると厄介なので、国際単位系(SI)を使用する国が多いですが、アメリカではメートルよりもヤード、イギリスではグラムよりポンドを使ったりします。また、メートルやキログラムなどは不変の物理定数を用いて表すことになりました。その結果、測定はより正確になったのですが、日常生活ではほとんど影響はありませんので、知識として理解しておけば良いと思います。


第3回 原子-1

 第3回は、原子について解説しました。
 原子は中心の原子核とその周りを回っていて、負の電荷をもつ電子から構成されています。原子核はさらに正の電荷をもつ陽子と電荷をもたない中性子から成り立っています。電子は原子核を中心に層状(同心円状)に回っており、原子核に近い方からK,L,M,N殻とよばれています。また最大電子収容数はK殻が2個、L殻が8個、M殻が18個…と増加します。そして一番外側の電子を最外殻電子といいます。
 原子番号や質量数などの話もしました。質量数や電子数、陽子数を求めるような問題は試験に出しやすいので、高校の教科書や参考書に例題などを解いてみると良いと思います。次に相対質量についても解説しました。これら原子についての性質は基本なのでまとめておいて下さい。
 質量欠損や質量とエネルギーの等価性に関する内容は少し難しいかもしれませんが、大まかに理解できれば良いです。
 ボーアによる原子半径についても説明したましたが、こちらはざっくりと理解できていれば良いと思います。


第4回 原子-2, イオン

 第4回は、原子のつづきとイオンについて解説しました。
 まず、安定同位体や放射性同位体について解説しました。放射線については別の回でまた説明します。
 次に電子配置について解説しました。電子配置は4つの量子数により決まります。このとき、どの順番に電子配置が決まっていくのかを解説しました。
 その次にエネルギー準位について解説しましたが、安定な基底状態にある原子にエネルギーを加え不安定な励起状態にすると、光や熱を出して基底状態に戻ります。この時、L殻以上のエネルギー準位からK殻に戻るときに出るスペクトルをライマン系列、M殻以上の高い準位からL殻に戻るときに出るスペクトルをバルマー系列といいます。
 イオンは、原子が電子を放出して正の電荷を帯びた粒子である陽イオンと原子が電子を吸収して負の電荷を帯びた粒子である陰イオンがあります。また、ただ1個の原子からできたイオンを単原子イオン、2個以上の原子が結合してできたイオンを多原子イオンと呼びます。
 原子から価電子1個を取り去って、1価の陽イオンにするのに必要なエネルギーであるイオン化エネルギーといいます。一方、原子が最外殻に電子を1個受け取り、1価の陰イオンになるとき放出されるエネルギーを電子親和力とよびます。イオン化エネルギーや電子親和力には周期性があります。


第5回 周期表, 化学結合-1(共有結合, 配位結合)

 第5回は、周期表と、化学結合、今回は特に共有結合、配位結合について解説しました。
 周期表は横方向を周期、縦方向を族と呼び、種々の元素の性質に沿って並んでいます。特にそれぞれの族の性質をまとめておいてください。
   共有結合は、2個の原子間で、それぞれの原子の価電子を共有してできる結合で、主として非金属元素の原子間でおこリます。そして、これにより形成される安定な粒子を分子といいます。不対電子が電子対をつくり、互いの原子に共有され共有電子対をつくり、共有結合ができます。また共有結合にかかわらない電子対は非共有電子対といいます。
 共有結合が両方の原子からの不対電子により共有電子対をつくるのに対し、片方の原子の非共有電子対が他の陽イオンに配位して結合したものを配位結合といいます。配位結合は、共有結合の一種です。また、金属が配位結合してできたイオンを錯イオンといいます。


第6回 (遠隔講義)環境と化学

 第6回は、酸性雨やフロンによるオゾン層破壊など、環境と化学について解説しました。
 オゾンそのものは光化学オキシダントの原因になり、またオゾン殺菌といわれるように生物には有毒です。しかし、オゾン層では、紫外線の地上への到達を弱められます。このようにオゾンは良い面と悪い面の両方を持ち合わせています。オゾン層を破壊するフロンについて、その開発の経緯や特定フロン、代替フロンとは何なのかを解説しました。フロンがどのようにオゾン層を破壊するのか、そのメカニズムについても解説し、最後に、フロン規制に関わる法律や現在行われている対策についてお話しました。
 次に酸性雨についての定義などを解説しました。酸性雨はpHが5.6以下の雨のことです。これは大気汚染の認められない地域の雨でもこのくらいのpHを示すからです。自動車や工場から排出されるNOxやSOxが雨や雪に溶け込んだり、チリとなって地面に降下することが原因です。次に日本における現状を解説しました。酸性雨自体は観測されているのですが、樹木の成長量から見ると、森林の衰退は認められませんでした。森林は酸性雨だけではなく、オゾン暴露による影響や病虫害、動物による食害など、さまざまな要因が絡んでくるので、これらを総合的に判断することが必要です。


第7回 化学結合-2(イオン結合, 金属結合, 分子間力)

 第7回は、イオン結合, 金属結合, 電気陰性度, 分子間力, 水素結合について解説しました。
 イオン結合は、陽イオンと陰イオンとが静電気的引力(クーロン力)により引き合ってできる結合で、主として、陽性の強い金属元素の電子が放出され、陰性の強い非金属元素に移動した、陽イオンと陰イオンの間でおこる結合です。共有結合とイオン結合の違いは、きちんとまとめておいてください。
 金属元素の場合、価電子が自由電子となって金属原子の最外殻の重なりあった部分を自由に動きまわることで、金属原子同士を結びつけています。このように、自由電子による金属原子同士の結合を金属結合といいます。金属結合により金属元素が規則正しく配列した状態の固体を金属結晶といいます。金属結晶は自由電子をもつため、電気伝導性、熱伝導性、金属光沢、延性や展性を示します。
 電気陰性度は原子が電子を引きつける能力のことで、電気陰性度の値が大きい原子は分子間で電子を引きつける力が強くなります。
 分子同士には分子間力がはたらきます。分子どうしが接近しているときは強く作用し、分子間の距離が大きいときはほとんど作用しません。分子間力の代表的なものはファンデルワールス力です。
 水は大きな極性を持つ分子です。水分子では電気陰性度の大きな酸素原子に水素原子が引き寄せられ、極性が生じます。水素原子は、F, O, Nのような電気陰性度の大きな原子に引き寄せられて水素結合をします。


第8回 物質量, 溶液の濃度

 第8回は、物質量や溶液の濃度について解説しました。
 原子量、分子量、式量は高等学校の化学では必ず習う項目ですが、よくわからないということが多いです。
 アボガドロ定数やモル質量、モル体積など、高校の教科書、参考書には必ず書いてあるので、きちんと復習しておいて下さい。
 また、実験などで使う溶液の計算方法についても説明しました。質量パーセント濃度やモル濃度の基本的な計算のほか、特に間違えやすい、パーセント濃度からモル濃度への変換などについて説明しました。このような計算は試験にも出題しやすいので、高校で苦手だった方はこれを機会に理解しておくと良いでしょう。


第9回 (遠隔講義)生体物質

 第9回は急遽遠隔にて、生体物質について解説しました。
 生体物質で重要な水, 糖, 脂質, タンパク質および核酸について概説しました。特に、糖の分類や結合のしかた、アミノ酸同士の結合やタンパク質の性質、脂質の構造や種類、核酸の種類は各自で十分に学習してください。


第10回 化学反応式, 化学反応とエネルギー

 第10回は、化学反応式と、化学反応とエネルギーについて解説しました。
 反応物と生成物の関係を化学式を用いて表したものを化学反応式といいます。化学反応式における係数は物質量、すなわちモル比を表すと同時に、体積や質量との関係も表しています。そのためこの係数を求めることはとても重要です。化学反応式を難しいと思う人もいますが、大事なことは「左辺の原子の種類とその原子の数」=「右辺の原子の種類とその原子の数」ということです。係数を求める場合、簡単な式であれば両辺をよくみると分かることがありますが、複数の反応物や生成物がある場合は未定係数法を使って係数を決定します。
 化学反応では熱の出入りも問題になります。エンタルピーという状態関数を導入し、反応式のあとにエンタルピーを書きますが、その際に正と負の記号を間違えないようにしてください。
 最後に結合エンタルピーについて説明しました。今回は少し難しかったかもしれません。きちんとまとめておいてください。


第11回 物質の状態(気体)

 第11回は、物質の状態として、気体の性質について解説しました。
 まず物質の状態について解説しました。物質には液体、気体、固体の3つの状態があり、これらを相といいます。水は氷から水になるときに融解熱を吸収し、さらに水から水蒸気となるとき蒸発熱を吸収します。このように熱の出入りを伴い相が変化します。こうした状態の存在する条件を図にまとめたものを状態図といいます。
 容器に入れられた気体は、その容器の体積と形状を持つことや、2種類の気体を同じ容器の中に入れると、均一に、また完全に混ざる、気体の密度は固体や液体に比べて低いなどの性質があります。
 気体に関する法則としては、ボイルの法則、シャルルの法則、ボイル-シャルルの法則があります。これらの法則をアボガドロの法則とまとめて理想気体(体積ゼロ、分子間力なし)の式として表されます。また混合気体の場合、ドルトンの分圧の法則が成り立ちます。
 気体の性質や法則を用いた計算は高校の参考書や問題集にたくさん載っているので、自分で練習することをおすすめします。


第12回 物質の状態(液体、固体)

 第12回は、物質の状態として、液体と固体の性質について解説しました。
 液体の性質では、まず浸透と浸透圧、浸透圧を計算するときに使うファントホッフの式について解説しました。
 次に、溶液における蒸気圧降下、沸点上昇と凝固点降下について簡単に解説しました。沸点上昇と凝固点降下では、質量モル濃度を使うので注意してください。
 コロイド溶液については、チンダル現象とブラウン運動についてまとめておいてください。また、疎水コロイドでは少量の電解質によってコロイド粒子が沈殿する凝析がおこし、親水コロイドでは多量の電解質によってコロイド粒子が沈殿する塩析をおこします。
 固体の性質として、粒子が一定の規則性をもつ結晶と粒子が不規則な無定形結晶(アモルファス)に分けられます。


第13回 pHの計算, 平衡定数, 酸と塩基

 第13回は、pHの計算, 平衡定数, 酸と塩基について解説しました。
 pHは酸性や塩基性の強さを水素イオン濃度の対数で示したものです。対数に慣れておいてください。
 正反応と逆反応の反応速度が等しい状態を平衡状態といいます。平衡状態における反応物の濃度と生成物の濃度が関係づけられ、この時の定数を平衡定数と言います。平衡反応がすべて気体からなるとき、モル濃度ではなく気体の分圧で考えることが多く、このときは圧平衡定数といいます。平衡定数と圧平衡定数は変換可能です。
 平衡の条件(濃度・温度・圧力)を変化させると、その変化による影響を緩和する方向に平衡が移動します。これをルシャトリエの原理といいます。
 酸味を示し青色リトマス紙を赤色に変えるような性質を酸性としい、その水溶液が酸性を示す物質を酸といいます。一方、苦味を示し、酸性の性質を打ち消したり、手につけるとヌルヌルした性質があり、赤色リトマス紙を青色に変えるものを塩基といい、このような性質を塩基性といいます。塩基のうち、水に溶けるものをアルカリといいます。
 この酸と塩基の定義としてブレンステッド・ローリーの定義を説明しました。これは酸が水素イオンを放出することのできる物質で、塩基が水素イオンを受け取ることのできる物質と定義されています。


第14回 緩衝液, 中和, 化学物質-1

 第14回は、酸と塩基, pH, 緩衝液, 中和について解説しました。
 酸や塩基の強弱などは電離度で示されます。この電離度の計算について解説しました。
 緩衝液とは、酸や塩基を加えても、それが少量であれば、その影響を緩和し、pHがほぼ一定に保たれる水溶液のことです。また、酸と塩基による中和反応について解説しました。
 化学物質について、そのリスク管理に伴う法律や制度などを解説しました。また、後発医薬品とは何かについて解説しました。

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第15回 化学物質-2, 放射線

 第15回は、化学物質の続きと、放射線について解説しました。
 まずアスベストによる中皮腫、PCBによる油症事件について説明しました。過去には、非常に有用だといわれた物質が実はとても危険であり、人体に多大な影響を与えることを理解してもらえたらと思います。
 次に放射線について、その種類などを説明した後、放射線を出す側と受ける側の単位について説明しました。また、放射線量が半減する時間、半減期について説明しました。